『学問』

山田詠美さんの、しっとり真面目な文章が、好きだなぁ。丁寧に、ひとつひとつ、心情をすくいあげてくれる文章。


小説には、読者からみておおざっぱに3種類の印象があるように感じています。あくまでも私個人の感じ方です。専門的にはきっちりとした分類の仕方があるのでしょうけども。



学問

学問



一つ目は、状況描写が主体で、そのリアリティで読ませる小説。事件のレポートのようなもの。心理描写も巧みだが、おおむね客観的に描写されており「堅い」印象。充実した手ごたえのある読後感を残すもの。


二つ目は、会話が主体で、会話文の中から状況をつかめるように構成されている小説。客観性はやや薄れるが、読者も小説中の人物と同じレベルの世界で悩んだり翻弄されたりする。感触は、前述に比べるとやや「軽い」印象。


三つ目は、ほとんど一個人の視点からのみ、主観的な描写を続ける小説。ひとりよがりだったりひとり語りだったりする。客観的視点はほとんどなく、「重い」印象。


この本の雰囲気は、上の三つ目に該当します。戦後は私小説ブーム(?)があって、日記文学など、ひとりよがりな「重い」小説が量産されました(もちろん質も伴っているでしょう)。


古くは平安時代から、日記型の書物は数多く遺されていて、小説なのか日記なのか自伝なのか境界線はあいまいです。こういう古典的な文章が、私の一番好きなタイプの書物かもしれないなぁと、『学問』を読んであらためて思いました。
日本人気質なのかしらねぇ。