いつもの伊坂さんの物語と同様に。
伊坂ワールドです。


アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)


【忘物】

リュックサック一つとアヒルの子が僕の所持品で、


僕は慌ただしい朝刊の作業現場にいた。
「まだ新聞届かないんです!」
怒りと催促の電話がかかってくる、
僕はここの人間じゃない、
たまたま居合わせているだけだ。
なのに何故か僕が謝っている。
はやく時間が過ぎれば逃げられるのに。
そして僕の通勤時間はきた。
急いで外に出ようとしたら笑点のテーマ曲。
ラジオ体操のテーマ曲じゃないんだな。
そうだここは劇場だった。
あの楽屋裏の長階段を昇れば・・ああ行き止まり。
ええい!トイレの窓を突き破れ。
ようやく外へ出て気付いたら…
ヒルの子をどこかへ置いてきてしまってた。


忘れ物係の人が潰さぬよう両腕に包んで届けてくれた。 
 
(瀬田透:2003/03/02)