味覚
今でもその言葉をあまり信じられないのですが。
オトナになってから聞いて、びっくりした母親の発言があります。
「料理は好きじゃない」
聞いたとき、ええーー! のけぞりました。
母は毎日、晩ご飯はお魚をイチからさばき開いて、梅煮やフライや南蛮漬けを作ってくれてたし、週末は蒸しパンやカップケーキの朝ご飯で楽しみだったし、学校から帰ったら、かならず手作りのフルーツゼリーやババロアがたくさん用意してありました。
専業主婦でもないのに・・。
味噌汁は毎日、前の晩から、かたくちイワシの干物を地下湧水に漬けてダシとってました。作るときは、大きめの乾燥昆布を煮出してました。
それでいて私は日々、さして有難いと思うことすらなく当たり前のようにして食べていたんですねえ。
そんなこんなでてっきり、母親は料理が得意で、好きでやっているんだろうと自動的に思い込んでました・・・。
おめでたい奴で恥ずかしいことです。
こうして無事すくすく育ってきまして、当時は好きでも嫌いでもなかったメニューが今では私の好物になっています。
酢ダコきゅうりとか、大豆の煮たのとか、ひじきさんとか、鶏レバーの甘辛煮とか、鶏がら&キャベツ入りおでんとか。
なかでも筑前煮(実家では、これを“煮っころがし”と呼んでいます)は大好物です。
子供の頃の舌の記憶は一生ものといいます。
一人暮らしを始めて自作しているメニューを顧みると、やはり幼少に刷り込まれた味覚はそうそう裏切られることはないのだなぁとしみじみ感じ入ります。