七色に光る車


史上最悪の気分だった。


仕事で遠い田舎まで電車で出かけた。
「もうどうでもいいや」という気分で生ぬるい風に吹かれていた。


天気も良かったので、そのせいで、心はどこか旅に出る気分で。
遠い春休みの感覚だった。



電車の乗り換えで、とある駅からおばあちゃんの隣の席に座った。
彼女は、はっと目覚めて「あら、ここは何駅?」と私に尋ねた。
教えると、驚いた顔で「まぁ、寝過ごしている間にここまで来てたわ」と笑った。


その驚き方があまりにもかわいくてチャーミングだったので、私は非常に感動した。


彼女を正視できなかった。
彼女の笑い方はあまりにも私を信用しきった朗らかさだったんだね。
彼女は次に降りるまで、私の方を何度も盗み見てた。
話しかけたそうにソワソワしていた。


私は自分の心を落ち着けて、
いつ話しかけられてもいいように体中で彼女の存在を受け入れた。