歎異抄(序)

ひそかに愚案を回らして、ほぼ古今を勘がふるに、


先師の口伝の信心に異なることを嘆き、


後学相続の疑惑あることを思ふに、


幸ひに有縁の知識によらずは、


いかでか易行の一門に入ることを得んや。



まつたく自見の覚悟をもつて、他力の宗旨を乱ることなかれ。



よつて、故親鸞聖人の御物語の趣、耳の底に留むるところ、


いささかこれを注す。



ひとへに同心行者の不審を散ぜんがためなりと云々。


参考文献:『浄土真宗聖典』教学伝道研究センター編纂 本願寺出版社