『イニシエーション・ラブ』

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)


子供の頃の思い出です。遊園地に“マジックハウス”というアトラクションがありました。これがとても好きで、地元に唯一ともいえるその遊園地へ通うたび、飽きもせず“マジックハウス”へ入ったものでした。陽気なピエロの顔が大きく描かれた、なんとも楽しげな外観のおうちです。


私の記憶する“マジックハウス”内の様子。洋風のガランとしたリビングのようなところに、なぜか食卓風のテーブルと椅子が、無言のまま据えられています。入場者はその椅子に腰掛けます。定員4名ほどでしょうか。壁には、今思えばチープな、しかし欧風な部屋に飾ってありそうな額絵、隅にはソファーが備えてあります。


さてアトラクションが始まると・・つまり、入場者4名が椅子に着くと、若い執事(遊園地の係員ですね)が部屋の扉に鍵をかけて姿を消します。なんだろう・・不穏な雰囲気が醸し出されてきました・・。
数秒後、地震体験マシンのように部屋全体が微動し出し、徐々にその揺れが激しくなり、椅子に座っていられない感覚に襲われだします・・。ガッタン・・ガッタン・・・・ガッタン・・ガタン・・!・・ガタン!・ガタン!! 
揺れに合わせて壁が傾斜し、床の角度も不安定になり、壁とテーブルと額絵とソファーの平行感覚が非現実的にずれ、体感からの情報と視覚からの情報にひずみが生じ、、。江戸川乱歩的な怖さです。


この小説の読後感は、ちょうどそんな感じでした。