千軒坊

庶民の飲食店で、ランチを供する際に店員さんが発するセリフは、だいたい決まっています。




「いらっしゃいませー」
「ご注文が決まりましたらお呼びください」
「おまたせいたしました」
「ありがとうございました」


などです。


「おすすめは○○でございます」
「本日の日替わりは○○です」
「おひやいかがですか」
「ごゆっくりどうぞ」


というのもあります。


お客さんが“何にしようかな・・”“今日の日替わりは何かな・・”とつぶやきながらメニューとにらめっこしているときに、気をきかせて即座に応えてくれたり。お客さんのコップの水を見てまわってテーブルの状況を把握して注いでまわったり(一般的には、長居のうざい客をチェックしているのか)。サービスとして、愛嬌と臨機応変な会話をシゴトと心得ている店員さんたちです。


とはいえ、これらも想定の範囲内の決まりきった一問一答。臨機応変であるところの店員さんの応答は、マニュアルどおり難なく耳へ入ってくる。ランチどきは忙しいのでいちいち面倒くさいのは客も求めていないですからね。


このお互い分かりきった感が、何事をもスムースに進めてくれるのです。


さて。千軒坊は若く垢抜けた美しい女性の店員さん3〜4名体制で配膳されています。そのどなたも、まことに丁寧。マニュアルどおりのセリフをしっかりはっきり口にしておられるにもかかわらず、マニュアル的にきこえない、ほんとうの会話のようでした。


そして極めつけの一言。どこかの席のお客さんが、何かこぼしたのを自分で拭いたか、お盆を寄せて片付けたか、されたのでしょう、店員さん、
「お心遣い、ありがとうございます」
とっても控えめな小さな声でスッと放ったのです・・。


そんなセリフは日本ランチ飲食店マニュアルには無かったはずなのだが・・!衝撃。KO。今のは空耳ですか・・?身の程を忘れドキマギしてしまい、客対応レベルすげー!と放心。。


で、私は結局おすすめも日替わりも頼まず、ざる蕎麦を頂いたんですが。。ここのお蕎麦、店員さんのレベルの高さ云々抜きにして、キュッとシメられた麺のコシ、はたまた小麦粉でなめらかさを誤魔化していないしっかりとした蕎麦の味わい、つゆの変な媚びた旨みや甘さが無い点、じつによろしかったです。


ざる蕎麦でおいしいと思えた麺は、人生で今のとこ5回以内くらいです。