マイシャガール美術館 -5-
--- 聖書の世界 ---
宅内を彷徨う内、この場に充満している、息詰まる、静止しているかのような・・現実感のない空気にのまれてしまう。
遊園地のマジックハウスに閉じ込められたような。ワクワク感と不安に包まれる。
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この美術館には、私が体験したことのない時間が流れている。
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ここに居続けると、前に私が生きていた時間には戻れなくなってしまう。ここは、心地いい。ずっと、ここに居たい。この美術館で、考え事をしていたい。
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“広い”“美術館”内には私ひとり。館内を一巡りしたころエアコンがようやく効き始めてきたようだ。汗がだいぶん引いてきた。
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ふと気がつくと、次の仕事の予定に間に合わなくなりそうだった。もう帰らなければならない。ITシステムとそれに係る業務は、ちょうどよい具合に定期的に不具合を出す仕組みになっているのだ。
と言い訳しておこう。そうでもしないと、この後ろ髪引かれる不思議な感覚と、帰らねばならない口実を説明しきれないから。
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来館者手帳には「また来ます」とだけ記入してマイシャガール美術館を後にした。
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