『サミング・アップ』

モームは設定が軽薄な小説や劇を書いていたからか、俗っぽいと評価され報われないばかりの人生だったのか。
本人の意図する方向とは違った、社会的な待遇上では報われたのかもしれないけども。


サミング・アップ (岩波文庫)

サミング・アップ (岩波文庫)


彼は俗っぽさにこそ人間のおかしみと真実があると捉え、小説や劇作中でその妙味を表現しました。痛いところをさりげなく、あるときは警句のように登場人物に発言させている、それがうわっつらの言葉でなく、自分の本心(本音)であるということを、本書で赤裸々に語っています。


モームは本書を執筆するにあたって「100%の本音では書けない、書いていない」というような前置きをしています。


100%の本音で書けなかったのは、羞恥心があったからでしょう。
真面目に本音を書いてゆくのはとても恥ずかしいことで、モームは皮肉屋であったと同時に、他人の視点も十分考慮できる、想像力豊かな繊細な作家であったのだろうと思います。