『ラディゲの死』

古典的な小説が読みたいときには、三島です。


短編集です。


ラディゲの死 (新潮文庫)

ラディゲの死 (新潮文庫)


たとえば音楽ならモーツァルト


600曲以上作曲された曲は、ほとんど形式どおりで・・型にはまった展開、階調、メロディー、繰り返しだけでつくられているんですよね。
ふるい日本人の感覚でいうところの、ドラマ水戸黄門的な。型どおりの構成ですねというような。


三島の小説も、“これぞ古きよき時代の小説ですね”といった時代遅れな“型”があります。
なつかしいような、わかりきっているからこその安心感がある。


本書に収められている短編は、雑誌の連載で執筆されたものだから、いそがしくて飽きっぽい庶民層をターゲットに書かれていたのだろうし、時代に媚びた内容であるのかもしれない。


時代に媚びるというのは、その当時に受けていた価値観や文体に倣いながらその枷のなかで個性的な小説を書く、ということです。


ひっくるめて、やはり型どおりの古典小説だなぁと、安心して読めます。