『わかったつもり』
受験時に問題文を読み込んだり、ディベートで論破されないために専門書やニュースを頭に入れる、といった環境下で奏功する一冊。
いかに正確に文脈を読み解くか。思い込みのまま読み飛ばした箇所はないか。書かれている文字列を有機的に文脈としてつなげる作業過程の脳のカラクリなど。このあたりの考え方、わくわくしながら興味深く読みました。
脳は、書かれていないことを想像で補強し、論旨一貫させる作業を無意識のうちにおこなっているというのですね。人によっては的はずれなスキーマによって、文脈を解してしまうこともありうる。
- 作者: 西林克彦
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2005/09/20
- メディア: 新書
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本書では、正確に文章(筆者の主張や恣意的な工作)をとらえることの大切さを唱えています。
わかったつもりにならない防止策のために、わかったつもりになってしまう構造をあばき、記述の矛盾やあいまいな箇所を見抜く経路を解き明かし示そうとしています。さらには、そんなわかったつもり脳の反応を、なまけた生ぬるい生命活動であるというように示しています。
一方で、私には、必要範囲内でわかったつもりになることも人間の脳の素晴らしい点であるような気がしてなりません。
例文に挙げられていた『お母さんタマと三匹の子猫』で、読後に子猫の性格を正確無比に把握しておくことがこの『お母さんタマと三匹の子猫』の物語の趣旨に沿っているとは思えませんしねぇ。猫が電話で会話することはおかしくないか?なんていちいち考えていたら、物語のムードが死にます・・。そこは突っ込んじゃいけないとこなんだってば、。
精査が必要な情報なのかどうかを先に判断して、そうでもなさそうなときはスルーする、という技をつかえるのは、人間の頭の便利なところですね。