歎異抄(四)

慈悲に聖道・浄土のかはりめあり。


聖道の慈悲といふは、ものをあはれみ、


かなしみ、はぐくむなり。



しかれども、おもふがごとくたすけとぐること、


きはめてありがたし。



浄土の慈悲といふは、念仏して、いそぎ仏に成りて、


大慈大悲心をもつて、


おもふがごとく衆生を利益するをいふべきなり。



今生に、いかにいとほし不便とおもふとも、


存知のごとくたすけがたければ、この慈悲始終なし。



しかれば、念仏申すのみぞ、


すゑとほりたる大慈大悲心にて候ふべきと云々。


参考文献:『浄土真宗聖典』教学伝道研究センター編纂 本願寺出版社