歎異抄(十七)

辺地往生をとぐるひと、

つひには地獄におつべしといふこと。

この条、なにの証文にみえ候ふぞや。

学生だつるひとのなかに、

いひいださるることにて候ふなるこそ、

あさましく候へ。

経論・正教をば、いかやうにみなされて候ふらん。


信心かけたる行者は、本願を疑ふによりて、

辺地に生じて、疑の罪をつぐひてのち、

報土のさとりをひらくとこそ、うけたまはり候へ。


信心の行者すくなきゆゑに、

化土におほくすすめいられ候ふを、

つひにむなしくなるべしと候ふなるこそ、

如来に虚妄を申しつけまゐらせられ候ふなれ。


参考文献:『浄土真宗聖典』教学伝道研究センター編纂 本願寺出版社