『銀嶺の人』

主人公は対照的なふたりの女性です。
このふたりの、仕事における個人的な生活模様の描写がまた、専門的で読ませるんです。
著者の情報収集力と、それを小説に生かす技が垣間見られ、唸りました。


銀嶺の人(上) (新潮文庫)

銀嶺の人(上) (新潮文庫)


銀嶺の人 下 (新潮文庫 に 2-18)

銀嶺の人 下 (新潮文庫 に 2-18)


新田次郎の作品は、心理描写の結晶と言ってもよいくらい内面的な小説です。この点が、私がはまった理由のひとつかもしれません。
文体がすっきり真面目であることも好ましいです。
また、どんでんがえしのミステリーとして読んで十分応えてくれますし、登山の醍醐味を味わう技術論だけを目的としても楽しめます。


んー。新田次郎の小説の切り口は、登山をはじめとして、一介のサラリーマン、どこぞのお嬢様、そのへんのおじいさん、ヨーロッパの田舎町、さまざまな状況設定があり、そのどれも質が高く、氏の著書を読むたびネタの豊富さに新鮮な驚きを覚えます。
すべてに共通しているのは主人公の誠実さ、人間の描き方の巧みさです。